登校前々夜

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 おじさんに招かれるままについて行くと、職員室と校長室の間にある、応接室と書かれた部屋に案内された。  中に入り、手前のソファに腰掛けるよう促されて、お母さんと僕が座る。  おじさんの方は、一度職員室に行った。  誰かと入れ替わるのかな、と思っていたけど、戻ってきたのは同じ人だった。  手にしているのはお盆と、お茶の入った三つの茶碗。  それをお母さんと僕の前に置くと、テーブルを挟んだ反対側に、そのおじさんは腰掛けた。 「えー、改めまして、私、葛西君の担任になります、坂井敏郎(さかいとしろう)と申します。よろしくお願いします」 「よろしくお願いします」 「あ、お願い、します」  おじさんが頭を下げたので、おかあさんと僕も同時に頭を下げた。  この人、担任だったのか。  その人、坂井先生は、脇に重なった書類の束を、二、三枚手に取ると、こちらに向き直った。 「転入手続きはお済のようですね。では、まずは・・・」  そう言って目の前に出されたのは、この学校の制服のパンフ、というか、二つに折りたたまれた一枚の広告の様な紙だ。  表紙には、ここの在校生、またはかつての生徒だった人だろうか、男女一人ずつが、制服を着て微笑んでいる写真がある。 「学校には明後日からの編入という事で、明日中に制服をご用意ください」  真新しい制服。あの学校のブレザー以外ならなんでもいい。  と、そう思っていたけれど・・・ 「これが、ここの制服?」  僕は、独り言のように呟いた。 「いやあ、慣れれば何てことないですから」  先生は、頭を掻きながら大袈裟に笑っている。  お母さんも、流石にこれには絶句しているようで、目を見開いたまま、そのパンフに写る制服姿の男女を見ている。  そこに写っている男子も女子も、共に学生ズボンを穿いていた。  太もも好きのミニスカ大好きな僕は、女子のズボン姿に落胆した。  でも、落胆したのは、少しあとの事で、今はそこはどうでもいい。
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