惜春

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 違うと言いながらデスクに両肘をついて、両手で頭を抱え込んだ。まるでひどい片頭痛に襲われた時のような吐き気が上がってきた。  体調が悪いというより、このまま頭痛を起こしそうだった。自分の気持ちがこんなにも揺さぶられていることに頭が痛くなっているのだ。  「……誰から内示の事を…そうですよね、部長から…ですね」  黙って桜井の顔を見た。部長から聞いたのは事実だが、それが何だと言うのだ。間接的に知って傷ついたとのですかと問いたいのか?  一体自分は何を考えているのか、馬鹿げている。桜井の恋人ではないんだと自分に言い聞かせる。  桜井は頭をがしがしと掻くと下を向いて小さく息を吐いた。  「すみません…実感がわかなくて…その…いえ、申し訳ありません」  何を謝られているのか、わからず答えることができなかった。  「いつ、移動になるんだ?」  そう聞くのが精一杯だった。  「ゴールデンウィーク明けすぐです」  「そうか」  桜井もそれ以上何も話さなかった。ただいつものように目の前の仕事をこなしていった。  書類の束を重ねなおしながら、ふと考えた。今年は気が付いたら桜は散っていたな、次の桜の季節を迎える時にはこの息苦しさもきっと消えてなくなっているはずだと。     
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