最終章 夜をこめて

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 桜井が驚いて声を上げる、分かっている自分でも馬鹿なことをしているのは。頭でわかっているのに、止められない、止まらない。  自分の体重を利用してゆっくりと桜井を受け入れようとする。何の準備もせずに受け入れられるはずなどない事は十も承知だ。ただ、かたくなに桜井を拒もうとする自分の身体が恨めしかった。  桜井が苦痛で顔をしかめた。  「はやま……さん。無理ですって」  「無理じゃない」  浅い呼吸を何度か繰り返し、力んで受け入れやすいようにと努力する。それでも苦行の様な時間になる、桜井のモノの僅かな滑りを利用しただけだ、苦しくて冷や汗が出る、少しずつ飲み込むように受け入れていこうとするが、苦しくて吐き気が上がって来た。  「つっ」  「ほら、苦しいのは羽山さんですから。ね、待ってください」  「駄目……だ。今日は俺が主導だ、覚悟しておけ」  ぐっと身体を落とすが頑として桜井を受け入れない自分の身体が恨めしい。桜井の顏が一瞬だけ歪んだ。  「羽山さん、どうか手を解いてください」  「だ……」  「このまま動きません。ただ抱きしめさせてください。お願いします」  だんだんと濃くなる夜、カーテンを開けはなした窓から入る月光で、薄ぼんやりと浮かび上がる桜井の顔が今にも泣きそうだった。  「きつい、か?」     
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