最終章 夜をこめて

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 くくっと御園は笑うと電話を切った。ああ、こいつにも甘やかされていると思う。誰にもすがらない、独りでも大丈夫だと思っていたのは単なる思い上がりだ。誰かに支えられてようやく立つことが出来ている。  もうこの年齢だ後は日々を穏やかに過ごし、その先は下って行くのみと思っていた人生はまだまだ上り路半ばだと思い知らされた。自分を覆っていたくだらないプライドも見栄も桜の花びらの様にはらはらと落ちて散っていった。  最後に残されたのは新緑の若芽だけだった。 【完】
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