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細長い廊下を歩いて、ある襖を開けると真新しい畳の色と匂いで、少しだけ懐かしさを感じる。
昔、田舎の広い家に住んでいた婆ちゃんを思い出す。
こういう和室で、子供だった俺と一緒に遊んでくれたよなぁ…。
和室の真ん中にある卓袱台に急須と湯呑みが二つ、お盆に乗せられて置かれている。
菓子鉢には煎餅がたくさん入っているみたいだ。
「飲み物は緑茶でいいですか?紅茶やコーヒーも用意できますけど…」
「あ、緑茶でいいです!緑茶飲んでホッと一息つきたいです!」
「ふふ、リラックスしてくださいね」
卓袱台の下にある座布団に座るとふかふかしていて、正座したら不安定になりそう。
そう思いながら、足を崩して座ると同時に、目の前に湯気の立つ湯呑みが置かれた。
「早速ですけど、私は"弓槻 万琴(ユヅキ マコト)"と言います。一応ここの家主ですが、あなたの同居人で家族だと思っていただけたらと思っています。万琴と呼んでください」
「俺は"秋村 透(アキムラ トオル)"です。これからよろしくお願いします!」
「よろしくね。えっと…秋村くんと呼べばいいのかな?」
「あ、透でいいです!家族みたいな感じですし」
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