パズル

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突然ですが私と彼、近藤悠人君はルームシェアをすることになりました。しかし、けっして恋人関係などではありません。なぜなら...。 事の始まりは一月程前。私は彼氏にフラれ、泣きながら町を歩いていました。その時、同じようにトボトボと歩く人物が向こうからやって来ました。よく見ると、それは同じ学部の近藤君で、彼もこちらに気付いたようでした。私達はぎこちなく挨拶を交わし、お互いが同じ境遇であろうことを察し、どこかでお茶でもということになりました。 近くの喫茶店に入った私達は、ブラック珈琲とミルクティーを注文しました。そこで初めて、近藤君が甘党だと知りました。それ程に、私達の関係は浅いものだったのです。少し塩気を感じる珈琲を飲みながら、私は彼とここまでの経緯を語りました。やはり彼も恋人にフラれたのだと、そして同棲していた家を出なければならないのだと言いました。すっかり失念していました。私も恋人と同棲をしていたのです。それを話すとどうしたことか、彼はルームシェアを提案してきました。冗談じゃない、と私は言いました。恋愛関係でもない異性と、いきなり同棲など出来ないと。やはり私は、近藤悠人という人間を把握しきれていませんでした。その時まで、彼の指す恋人が男であったこと、彼が同性愛者であることを知らなかったのですから。 そこからはあっという間でした。失恋の痛みとは凄いもので、普段はない行動力を与えてくれるようです。私は近藤君と不動産へ行き、引っ越し業者を呼び、ルームシェアを始めました。始めの方は上手くやれるか不安もありましたが、慣れてみると楽しいものです。彼の女子力とやらは私よりもずっと高く、洗濯や料理をテキパキとこなす姿は本当にありがたいです。逆に彼は、私の力仕事を得意とする所や気の強い所を褒めてくれます。私達は似た者同士とは言えませんが、補い合うことを覚えました。さながら、欠けていたピースを代わりに埋めてあげるような。そんな関係です。端から見れば奇妙な関係かも知れませんが、私達にはこれで良いのです。 貴方がもしよろしければ、一度遊びに来てください。一緒にお茶でもしましょう。彼の作るクッキーと、私の淹れる珈琲はとても相性が良いので、きっと気に入りますよ。
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