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また雪に嫌な思い出が降り積もる。
あの日も泣き崩れたわたくしの周りで、みんなも涙を瞳に湛え静かに哀しんでいた。
「父様…お父様…」
何故。
どうしてお父様が死んでしまったの。
お父様の入った棺の蓋が、汚い雪混ざりの土に次第に隠されていく。
待ってとそれを止めようとしたわたくしの手を、隣にいたドミートリー様がそっと握ってくださった。
「エカチェリーナ。父君の代わりに私が傍にいるよ。何時までもこうして君の隣に」
その手はとても温かくて、わたくしはドミートリー様にすがりついて泣いた。
「…ああ、ドミートリー様!もしあなたを失ってしまったら、わたくしは生きていけそうにありません…!」
「君を一人にするものか。オルロフ公爵が亡くなっても私達の婚約が解消される事はない。二人でこの国を守っていこう」
「はい…、はいっ!わたくし、必ず立派な皇太子妃となってドミートリー様の支えとなりますわ…!」
「嬉しいよ、エカチェリーナ。私もきっと君を守ろう。未来の妻一人守れずに、どうして国を治めることが出来ようか……――
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