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5.
その後、何度か連絡したものの、千紗に連絡はつかなかった。
千紗に何かあったのだろうか。
不安になり、自宅へ向かう足は速くなる。
「ただいま」と玄関のドアを開けると、リビングに明かりはついていた。
千紗の居る気配もある。
リビングドアを開けると、千紗が慌てたように、片づけをしていた。
「おかえりない。早かったんですね」
キッチンの流しに、千紗が来客用のカップを運んでいた。
「そうなんだ。接待が無くなってさ。誰か来てたの?」
「え? う、うん、そうなの。学生時代の友達が。こっちに来る用事があったから、ついでに寄ってくれたの。ごめんなさい。今日、遅いと思ってたから、まだ夕飯の支度もしてなくて。これから作るね」
「こっちも急遽予定が変わったからごめん。出前でも取ろうか?」
「ううん、大丈夫。すぐ作るから」
「一応、LINEで、延期になったこと送ったんだけど、気付かなかったんだね」
「え? そうだったの? 本当にごめんなさい。あれ? スマホどこだろう……」
千紗がスマホの在り処を身の回りから探し出す。
僕もリビングを見渡してみたが、なさそうだ。
リビングにないなら、あとは寝室の可能性が高い。
「寝室じゃない? 見てこようか?」
僕は尋ねる。
「あ、そうかも。お願いします」
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