第一章

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7. 数時間後、僕とその男は救急車に運ばれ、病院に居た。 男は『急性副腎不全』を起こしていた。 名前は大塚春明。 男は今回のように倒れる可能性を見越して、緊急時用カードを所持していたそうだ。 そのおかげで、男の身元の判明や処置がスムーズだったらしい。 医師からそのような説明を受け、ベッドで点滴に繋がれて静かに眠っている大塚春明の状態を見てやっと、僕は自分の置かれている状況を考える余裕ができてきた。 出勤途中だったことを思い出した。 時計を見ると、出勤時間はとうに過ぎている。 一報すら入れていない。これでは無断欠勤だ。 急いで病室から出ようとした時、僕は自分のではないコートを抱えていたことに気付いた。 大塚のものだ。 救急隊に大塚のコートを手渡され、ずっと持っていたのだ。 眠っている大塚の元に慌てて戻り、ベッド脇にコートを置く。 焦りのせいかコートの置き方が悪く、ポケットから何かが滑り落ちた。 落ちたものを見る。 それは革張りの手帳だった。 手帳の合間からは、何かが飛び出ていた。 僕はその手帳を拾いながら、飛び出ていたものを見た瞬間、動けなくなった。 それは写真だった。 そして映っていたのは、僕の妻、千紗だったのだ。
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