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僕はページをパラパラとめくり、文字が途切れた最後の文章を読んだ。
『朝から頭がぼーっとしていたせいで、千紗の旦那にすれ違いざまにぶつかってしまった。
アイツはぼくのことにまったく気付かなかった。
当たり前か。ぼくらに接点はない。
敢えてあげるなら、ぼくらは千紗を愛しているということくらいだ。
千紗は、笑顔で近づいてきて、ぼくを家の中へとあげてくれた。
そして、リビングから富士山が見えることを、嬉しそうに話してくれた。
その千紗の表情が、ぼくにとって嬉しいはずなのに、辛くもなった。
千紗、愛してる。
ありがとう、ぼくを愛してくれて。
明日も、千紗に会えるだろうか。2019.1.23』
僕は途端に、息苦しさを覚えた。
身に覚えのある日記の内容に、頭が混乱する。
最後の文章の数字は、昨日の日付と一致していた。
そして昨日の朝、確かに僕は大塚とぶつかっていた。
だが、千紗が大塚を家にあげた?
ということは顔見知り?
昨日、友人が遊びに来ていた友人は大塚だったということ?
突然、コンコンと病室のドアが叩かれて、僕はその音に飛び上がった。
動揺して咄嗟に、千紗の写真とその手帳を自分のコートのポケットに仕舞う。
病室のドアが開かれると、きれいな女性が入ってきた。
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