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1.
寝室のドアを開けると、妻の水瀬千紗がダブルベットの上で正座をし、上目遣いで僕をじっと見つめてきた。脈が上がる。
僕らはこの一年の結婚生活の中で、それぞれの夜の営みの催促方法が出来ていた。千紗のサインがまさにそれだった。
ベッドの上にあがり、千紗と向き合う。
胸元に掛かった乾かしきれていない千紗の髪を両手で肩の後ろへと回し、ゆっくりとボタンへ手を伸ばす。
一番目、二番目とボタンを外し、三番目に軽く触れたところで、千紗がたまらず吐息をこぼした。
急く気持ちをぐっと抑える。
僕はこの服を脱がす工程に高揚する。
いつも隠されている肌が徐々に僕の目の前に露わになっていく快感。
何度見ている肌でさえ、たまらなくそそるのだ。
焦らしながらボタンをすべて外し、パジャマを脱がしたところで、千紗の手が僕のパジャマのボタンにのびてきた。
今度は千紗が脱がす番だ。
互いに脱がし合う。求め合っている、と感じずにはいられない。
僕のパジャマを脱がした千紗は自分の背中へと一度腕を回し、するりと何かを掴んでから、僕の目の前に差し出した。
「いい?」
伏せ目がちに、千紗が確認してくる。
千紗が差し出したそれを僕はにんまりとしながら受け取って、「いいよ」と承諾した。
千紗が瞼を閉じたところで、差し出された肌触りのよい黒い布を千紗の目の上に被せる。
そして後頭部でギュッと縛った。
目隠しされた千紗は、手を伸ばして、僕をさぐる。
僕は眼鏡を外すと、千紗の手を取り、自分の頬に持っていった。
千紗の柔らかい唇を塞ぐ。
二人はベッドに倒れ込んだ。
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