第二章

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5. ************ 『まだぼくは生きている。 千紗がアイツと幸せな生活を送れるようになったのだから、もう死んだって構わないのに、まだ記憶もしっかりしている。 千紗の後を追いかけまわすのはもう止めた方がいいと分かっていた。 だけど、気付くとぼくは千紗を探しに外に出ていた。 ぼくの命が、今日のこの時まで続くのだと最初から分かっていたのなら、もう少し千紗と恋人同士でいれば良かった。 だがもうそれは遅い。 いや、そんなことを思ってはいけない。 千紗の相手がアイツだということが、ぼくの唯一の救いなのだから。 2019.10.11』 『ぼくはついに禁忌を犯してしまった。 まさか千紗がぼくの存在に気付いていたなんて、思いもしなかった。 いつもぼくが千紗の後をつけていたのに、ぼくの知らぬ間に千紗に後をつけられていた。 自宅の呼び出し音がなり、また文香が押しかけてきたのだと思って追い返そうとドアを開けたら、千紗が立っていた。 心臓が止まるかと思った。 千紗に問い詰められた。 何故、わたしをずっと追いかけまわすのかと。 愛している千紗が目の前に居る。 ぼくに話しかけている。 もう気持ちは止められなかった。 千紗が帰った後、ぼくはすぐに引っ越しの準備を始め、数日のうちに転居した。 もし千紗がぼくのところに来たとしても、再会できない。 ぼくも千紗を追いかけることを止めた。 ぼくの願いは叶ったから。 千紗の心は、ぼくとアイツでひとつ。 アイツのおかげで、ぼくは永遠に愛される。 もう思い残すことはない。 2019.11.15』
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