第二章

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7. 今朝と変わらぬ表情で、大塚は病室のベッドで眠っていた。 中山は居ない。 点滴に繋がれた大塚の寝顔は、安らかで静かなものだった。 その表情に、悲しみも苦しさも映し出されていない。 僕は色々な感情に支配されていた。 憐れみ、苦悩、嫉妬、憎しみ。 千紗の大塚の名を呼ぶ声が、耳の奥から消えてくれない。 千紗が目隠しをしたがる本当の理由を僕は今日の今日まで、まったく理解していなかった。 いや、分かるわけがない。 知りたくなかった!  いや、知らないままでいる自分はもっと愚かすぎる! 大塚の思惑は確かに成功してしまった。 千紗は僕と一緒に居る限り、コイツのことを思い出す。 いつまでも、永遠に! 抑えきれない怒りが湧き上がっていた。 僕は眠っている大塚に近づき、大塚の首を絞めていた。
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