第三章

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2. 今朝、家を出発してから半日も経過していないのに、夕方帰宅した我が家は昼間のうちに知らぬ人の家になってしまったような気がした。 僕が千紗のために建てたこの家が、大塚の功績の上に成り立っている。 家の中のどこに居ても落ち着かなかった。 一番居心地の良かったリビングのソファに腰を掛けていても、ゆっくりできない。 昨日、このリビングに大塚は入ったのだ。 そして千紗と二人きり。 ここで何が起こっていたのか、手帳からは読み取れなかった。 千紗はキッチンで洗い物をしていた。 千紗の様子からは違和感など感じ取れない。 逆にそれが不気味だった。 僕の知っていたはずの千紗が、得体のしれない女に見える。 「千紗」と声をかける。 「なに?彰人さん」と千紗がいつもどおり笑う。 僕の心は嫌らしい感情が芽生えていた。 千紗を試したくなったのだ。 「今朝ね。大変なことがあったんだよ」 僕は自分に、冷静にと言い聞かせる。 「会社に行くときにね。道端で倒れている人が居て、助けたんだ。救急車を呼んだりして、大変だったんだよ」 「そんなことがあったの? それは本当に大変だったね」 千紗の返事は誰かを意識した様子はまったく無かった。 僕はさらに追い打ちをかけた。
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