93人が本棚に入れています
本棚に追加
3.
「まさか、本当に千紗さんが不倫していたなんてね」
僕は加藤の言葉にズンと傷つけられ、何も言えずに項垂れた。
「しかもお相手は、過去に愛した男となると、これまた強敵だな」
「……他人事だと思っているだろう?」
落ち込んでいる僕をさらに打ちのめしてくる加藤が憎らしくなる。
「だって、この手帳に書かれていることは事実なんだろう? しかも水瀬の話も合せれば、千紗さんが大塚のことを思っていることは、逃れようがないじゃないか。
もうこうなったら逃げたってどうしようもない。現実を受け止めて、これからどうするか考えるしかない」
これからどうするか……。
まさにそれは本当に重たい問題だった。
いずれ千紗とは話し合う必要はあるのだろう。
だがその前に、僕は千紗とこれからどうしたいのか考えないといけない。
千紗はどうしたいのだろう。
大塚のそばに居たいのだろうか。
そう考えただけで、苦しくなる。
「しかしなー。大塚がしたことは水瀬にとってはキツイだろうけど、俺は大塚の気持ちも分からなくないなぁ」
「…おいぃ、加藤……」
「想像してみろよ。もし、お前が余命宣告をされたらどうするんだ?」
チクリと胸が刺さった。
この痛みの理由は分かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!