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『春明の調子が良くないの。もうダメかもしれない』
「……え?」
『だから病院を移ったの。メモできる?』
僕は中山が告げた病気名を近くにあった紙に書いた。
『春明の死に目に会いたいわよね? 殺したいほど、憎いでしょう?』
中山にそんなことはないと言い訳のしようもなかった。
何しろ、首を絞めようとしてしまったところを見られてしまっている。
僕が何も言えずにいると、『……いいのよ、そう思うのが普通よ。だから、春明の最後を見にきて』と中山は言い、遮るようにプチッと通話は切れた。
大塚が予想外に早く危篤になったことで、僕は戸惑ってしまった。
呆然とした僕に、千紗が「彰人さん?」と声をかけてくる。
「千紗……大塚のところに行こう」
僕の静かで重々しい声に、千紗はその意図を汲み取ったような目をした。
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