93人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ち、千紗は……今……幸せ?」
大塚が苦しそうな声で、途切れ途切れに聞く。
千紗は泣き出しそうになりながらも、「うん。幸せよ」と答えた。
千紗が大塚に微笑みかける。
「……良かった……。ぼくがあの頃も、今も変わらず願っているのは、千紗の…永遠の幸せだから……」
その言葉に、千紗は耐えられなくなって泣きだした。
僕はそっと千紗の肩を抱いた。
大塚が今度は僕の方を見る。
僕はポケットの中から大塚の手帳を取り出すと、それを大塚の手に握らせた。
手帳の中に入っていたSDカードは処分してしまった。
この手帳の中身を僕は勝手に読んでしまったけれど、これは大塚に返さなければならない。
大塚はその手帳をぎゅっと握ると、何も言わずに、僕をじっと見つめていた。
僕は何も言わずに、ただ大塚の目を見て、頷いた。
千紗は僕が幸せにする。永遠に。
そう心の中で強く誓った。
その気持ちはどうやら伝わったらしい。
大塚が安堵したように、緊張した表情を少し緩めた。 そして、僕に大きく頭を下げるようにして、そのまままた眠りについてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!