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「そりゃあ表向きはそうかもしれない。でも内心、不倫するのは仕方がないと認めている奴もいるよ。バッシングしているやつらだって、自分だって同じ境遇なのに救いがないからこそ羨ましくて責め立てているのかもしれないぜ? 実はさ、それを裏付けるアンケート調査だって持ってるんだ」
加藤は爛々とした目でエクセル文書を僕に見せてきた。
見出しは『現代の不倫事情』と書かれている。
「ほら、この『不倫を許せるかどうか』というアンケート結果。『絶対に許せない』と答えたのは、4分の1以下だってさ。一番多いのは『状況による』だって」
加藤がドヤ顔をしてみせる。
この纏めたデータを見せたかったのだと合点がいった。
「またこんなデータ作ったの?」
「そう。最近流行りなだけに、結構あちこちに情報があってさ」
「暇人だなぁ」
「何を言う。マーケティングのカガミといってくれ。どんな分野でもアンケート結果があれば、まとめたくなってしまうのが、俺の性分なんだ」
「はいはい。ここまで来たら、おたくだね」
僕は呆れながらも、加藤がまとめた書類を受け取り、パラパラと眺めた。
もし会議に使うなら十分に提出できるほどのデータ量だ。
それだけ世の中は不倫に関心があるということだろうか。
「そもそも、どうして不倫なんてするんだろう?」
僕には自分が不倫をするなんて、まったく想像がつかなかった。
「男の場合はいつまでもモテることを証明したいっていうのがあるらしい。女の場合は女として扱われることの幸せが関係しているらしいよ」
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