第二章

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第二章

1. 『千紗さんが本当に愛しているのは、水瀬さんと春明、どっち‥‥かしらね?』 不快な鼓動音がどんどん大きくなっていた。 僕の反応を観察するかのように、中山の目がじっとこちらを捉えている。 千紗のことを思った。 いつも笑いかけてくれる千紗。 僕を好きだと言ってくれる千紗。 信じていた千紗に裏切られていたのかとショックを感じながらも、千紗がそんなことをしているわけがないと思っている自分も居た。 千紗が不倫していたなんて受け止めきれない。 それに大塚の日記から読み取れたのは、千紗が大塚を家にあげたということだけだ。 ストーカー行為をしている大塚のことだ。 千紗を愛しているのかもしれない。 だが千紗が大塚を愛しているとは限らないじゃないか。 「千紗が愛しているのは、僕に決まっている」 自分の心を慰めるように呟いた。 宣言できるほど声を大にして言えない僕に、中山はフンっと鼻で笑い、「そうね。そうであって欲しいわ、私も」と穿き捨てるように言った。 一気に冷めた表情に変わった中山に、僕は怖さを感じた。 「もう、二人が別れてから、だいぶ経つのよ」 「別れた?」 「そうよ。春明と千紗さんは学生時代、ずっと付き合っていたの。こっちがイライラするくらい本当に仲が良かった。周りから結婚するだろうとも言われていたくらいだった。だけど別れたのよ!晴明が千紗さんを振ったのよ!それなのに……!」 中山が溜めていたものを一気に吐き出すように、後半捲し立てるように苛立った。 中山の大塚への気持ちが垣間見える。 「……もしかして中山さんは、大塚さんのことを?」 「そうよ。私、春明を愛してるわ。春明のことをすべて知ったうえで、愛している。千紗さんの思いなんかに負けないくらいにね」 中山の挑むような目を受け止めた時、スーツの内ポケットに入っていたスマホに振動を感じた。 僕はポケットからスマホを取り出す。 着信相手は同僚の加藤だった。
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