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家に帰ってくると、室内は真っ暗だった。
一応裸電球はあるのだが、日が暮れても有事の際以外は使用しないことにしている。電気代の節約だ。だから、もしかしたら隣田くんの部屋から漏れる明かりをいただけるかもしれないと淡い期待をしていたが、彼もまたコンビニの明かりのみで生活しているようだった。思考回路が同じだった。
ちらりと見ると、彼の部屋の脇にはビニールに包まれた瓦礫の山があった。
朝は瓦礫が積まれていた101号室と102号室の間は、綺麗に掃除されていた。砂埃も無い。代わりにそこには、雑誌や本、CDなどが積み重ねられている。
隣田くんは牛丼を食べながら、アイ$ーズの初バラエティ冠番組『同情するなら金をくれ!』を視聴していた。
「おい、お前。壁になるようなものをそこに積んでおけよ。俺のだけじゃ全く足りん」
「……分かったわ」
隣田くんに言われ、私はありったけの雑誌や本、CDなどを積み重ねた。
しかし悲しいことに、視界を遮る『壁』というには程遠い高さだった。膝丈くらいしかないので、普通に座っていても向こうの部屋が丸見えだ。せめて天井にハンガーなどをかけられる取っ掛かりがあれば、バスタオルなどで多少壁が作られるのだが。
でも、まあいいかと思った。
「おい、お前。匂いがこっちまで入ってくるぞ。シャットアウトしろ」
夕飯を作っていると、隣田くんが文句を言ってきた。
お金が無いので私は普段自炊をしている。この状況で匂いを遮るのは不可能だ。そっちだって牛丼の匂いをぷんぷんさせているくせに。
でもそこは妥協し、代わりに改善案を提案した。
「……いいわ。じゃあ契約しましょう。匂いが気になるなら、このビーフストロガノフを少し恵んであげる。自分で食べる分には匂いは気にならないでしょう。その代わり、たまにそのテレビを見せてちょうだい」
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