Beggar and a little girl

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Beggar and a little girl

 雲一つない澄んだ夜空に、一筋の流れ星が落ちた。  一人の男が、駅の前で物乞いをしている。銀色のボウルを自分の少し先に置き、ただ膝立ちになっている。  その視線の先はどこを見ているのか分からない。どこか遠くの彼方、人々の営みの先を見据えているような、虚ろな目。何かを諦めた目。  人々は男を無視して、彼の前を通り過ぎて行く。無視、というよりは「見ないようにしている」という表現が正しいかもしれない。世の中の闇の部分に触れたくない、それ故に近づかない。現に、人々は男を一瞬見る。でも、瞬時に目を逸らして何事も無かったかのように振る舞う。それ故、銀のボウルは空のままだ。  そんな男の前に、一人の少女が現れた。薄汚れた継ぎ接ぎだらけの服を着ている男とは対照的に、真っ白なコートを羽織り、首にはピンク色のマフラーをしている。しかし、辺りに保護者が居る様子は無い。 「おじさん、何をしているの?」     
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