奇跡の少女

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今まで見て来た如月が偽りの姿で、こうして夜の街を彷徨い暴れまわっているのが彼女本来の姿なんだろうか? 桐生の脳裏に紅葉の姿が浮かぶ。いつだって構えることをしない、無邪気に向けられる笑顔。その後ろで揺れる三つ編み。飾らない言葉。 「………」 (一概には何とも言えねぇよな。決めて掛かるのは好きじゃねぇし、とりあえず本人に話を聞かねぇことには何も解らねぇ…) 桐生は気持ちを切り替えると、皆を振り返った。 「皆、お疲れ。今日はありがとな。こんな時間まで引っ張り回して、結果的に余計な抗争にまで巻き込んじまってホントに悪かったと思ってる。だが、恩に着るぜ。今度何かしらの礼は必ずさせて貰う。今日は帰ってゆっくり休んでくれ」 そう(ねぎら)いの言葉を掛けると。 「なーに水臭いこと言ってんスか、若っ」 「そーですよっ。お気になさらずいつでも頼ってくだせぇ」 そんな言葉と笑顔が次々と返って来る。皆、何処かしら傷を負ったり、それなりに疲労が見て取れるというのに。頼もしい組員たちに桐生は笑みを浮かべた。 そんな様子を微笑ましそうに眺めていた門脇が、横から声を掛けてくる。 「…この娘さんは、どうするので?」 腕の中で静かに眠るに紅葉に二人して視線を落とす。 「この辺に放っぽってくワケにもいかねぇし。とりあえず連れて帰るしかねぇだろ」 「ですね。でも、この子家の方は大丈夫なんでしょうか?」 「へ?家?」 「彼女、未成年でしょう。親御さんが心配するのでは?普通の家は子どもがこんな時間まで帰って来なかったら心配するものですよ」 「あーまぁ、そうだよな」 ウチの感覚と一緒にしちゃいけねぇわな。
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