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「そのグループを潰したのが、どんな人物なのかって色んな憶測が飛び交ってるんだって」
「どんな人物って…。それって一人なの?グループとかじゃなくって?」
「それそれっ。普通別のグループとの抗争とか喧嘩とかって思うじゃない?でも、どうやらそうじゃないみたいなんだって。流石に一人ってことはないと思うけどね」
「ふーん…」
そこまで聞いて、ふと何かが頭を過ぎった。
不意に浮かんだ、夜の街。
暗がりに潜む複数の黒い影。
その影の向こうに小さくうずくまり震える塊。
執拗に絡まれ、時には手や足が振り降ろされ――…
(何だろう?こんな場面…。私、知らない…)
「どうしたの?紅葉?」
「え…?」
タカちゃんが急に黙ってしまった自分を不思議そうに覗き込んでいた。
思わず自らの意識に集中してしまっていたみたいだ。
「う、ううんっ何でもないっ。でも、その不良グループがいなくなったんならひと安心だね。これで少しは平和になるかもね」
慌てて感想を口にした。
「それがね、そう簡単な話でもないみたいよ」
タカちゃんが大袈裟に肩をすくめる動作を見せる。
「どういうこと?」
「最近は治安悪いしね。今までは例のグループが顔を効かせていたけど、それがいなくなったらなったで別の奴らが出て来るんじゃないかって心配されてるんだって」
「…キリがないんだね」
「ホントにねー」
そこまで話したところでチャイムが鳴り響き、タカちゃんは自分の席へと戻って行った。
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