君のために出来ること

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「え…?ボール…?」 思わぬところで自分の名が出てきて紅葉は目を丸くした。が、何のことを言っているのか分からず思わず首を傾げてしまう。その間にも香帆を中心に、会話はどんどん進んでゆく。 「ひっ…人聞きの悪いこと言わないでって言ってるでしょうっ!?私が、いつそんなこと…っ…」 バレることが怖いのか、圭の顔をチラチラと伺いながら狼狽える香帆に、桐生は腕を組んで再び溜息を吐いた。 「誤魔化しても無駄だ。オレは、この目でしっかり見てたんだからな。ま、ここでチクるのは簡単だが、アンタだってこれ以上惨めな思いはしたくねぇだろ?色々暴露される前に、ここらで身を引いた方が賢明なんじゃねぇのか?」 呆れた様子で諭されて、香帆はふるふると身を震わせた。最初は狼狽えていただけだったのが、次第に怒りを蓄積していくように全身に力を込めて俯いていく。そうして、発せられた言葉は普段の声のトーンよりも随分と低いものだった。 「…なによ。みんなしてこの子を庇ったりして。今更なのよ。どんなに誤魔化したって、この子が掃除屋だっていう事実は変わらないんだからっ」 唸るように呟くと、香帆は顔を上げた。早々に吹っ切れたのか、あるいは何かを企んでいるのか、口元には再び笑みを浮かべている。 「ねぇ、知ってる?如月さん。地元のヤクザがね、掃除屋の正体を掴もうと動き出してるらしいの。それでね、もうあなたが掃除屋だってことは、すっかり知られちゃってるみたいよ?」 まるで勝ち誇ったように人の悪い笑顔を紅葉に向けてくる香帆に。皆の目が点になった。
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