エピローグという名の日常

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「おはよう、圭ちゃん。ごめんねっ、待たせちゃったかな?」 慌てて門の側まで歩み寄ると、圭ちゃんは首を横に振った。 「大丈夫。僕が出るのが少し早かっただけで、紅葉はいつも通りだよ」 そう言って見せる優しい笑顔に。いつだって、つられるように自然とこちらも笑顔になってしまう。 そうして二人並び立つと、どちらともなく歩き始めた。 何気ない話をしながら学校への道のりをゆっくりと歩いてゆく。こういう穏やかな時間は、自分たちにとっては小さな頃からの変わらない、既に日常のようなものだった。でも、桐生さんの家にお世話になったあの日以降、実は圭ちゃんとの関係は少しだけ変わった。 こうして一緒に登校するようになったのも、その変化のひとつ。以前と違う部分は、お互いに『約束』をしているということだ。 以前は、圭ちゃんが家を出る時刻に合わせて私が家を出ていただけで特に一緒に行く約束をしていた訳ではなかった。小学校の頃から、ずっとそんな感じで来たので二人とも特に深く考えたこともなく、それが当たり前になってしまっていたのだ。 だけど、今回初めてそれが途切れた。それは、私が一方的に圭ちゃんから逃げてしまったからなのだけれど。 だって、ずっと考えていた。一緒にいることが当たり前になり過ぎて気付いたら圭ちゃんの迷惑になっていた…なんてことだけは避けたいって。 いつかは圭ちゃんの隣に自分以外の誰かが並び寄り添う日が来る。その時、見苦しい自分でいたくないって。   でも…。 「僕は桐生さんにも他の人にも紅葉のことを好きな気持ち…譲る気なんてないから」 そう圭ちゃんに言われた、あの日。 真剣な顔をした圭ちゃんが、そこにはいた。
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