エピローグという名の日常

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最近、圭ちゃんは変わった。 優しくて、ふんわりした雰囲気は今までと変わらないのだけど、ふしぶしにどこか意志の強さを感じるというか。そう、男らしくなった気がする。 「どんな優男だって好きな女の為なら皆強くなれるってもんだろ。逆にそういう大事な場面で本気になれない奴がいたとしたら、そりゃあもう男失格だな」…というのは桐生さんの談。 そういうものなんだ?と、感心する一方で、もし圭ちゃんが変わった経緯に自分が僅かにでも係わっていたとしたら良いなぁと思った。 「…でね、昨日は桐生さんに絡まれてさ、参ったよ。最近は紅葉が居ない日が多いからつまらないって。何だか残念そうに話してたよ」 一緒に歩きながら圭ちゃんが困ったように笑った。 圭ちゃんは、すっかり桐生さんに気に入られて会えばちょこちょこ色々ちょっかいを出されているらしい。…というのは立花さんから聞いた話なのだけれど。 「暴れん坊なんかいない方が平和で良いに決まってるのに…」 「まあね。でも、それくらい紅葉の暴れようは見事だったんだって。あんな気持ちの良い大立ち回りはなかなか見れたもんじゃないって絶賛してたよ」 「う…嬉しくない…」 それも『暴れよう』って…。まぁ確かに暴れていたんだろうけど。 桐生さんは前に宣言した通り、夜の街を正常化する為に多忙な日々を送っている。 松竹組が夜の街を仕切るようになってからは、以前よりも随分とガラの悪い連中の数も減ったと聞く。何より『掃除屋』の噂が少し落ち着いたことで、それを倒そうとして集まってくる輩が減ったのも理由の一つらしい。
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