エピローグという名の日常

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掃除屋が暴れていたことで余計に他所から人が集まって来ていたということは、実は悪循環だったんじゃないかとも思ってしまうけど。それを桐生さんに話したら「余計な事考えてんじゃねぇよ」って頭を軽く小突かれてしまったことは記憶に新しい。 「どうあれ、今までデカい顔して幅を利かせてた警察[サツ]も手に負えなかった奴らが、掃除屋のお陰でしょっぴかれたのが始まりなんだ。そこから流れを変えて来たんだから何も悪いことばっかりじゃねェだろ?」 そう言って、ニヤリと笑みを浮かべた。 「そもそも、その掃除屋も『お前』だったからこそ、オレら松竹組は今こうして動いてんだ。それで現に街は少しずつだが改善に向かっていってる。全てが繋がっていて、なるようになってんだよ」 だから、余計なことは考えるなと桐生さんは今度は優しげに笑ってくれた。 その言葉に。 自分には『掃除屋』としての記憶は殆どないけれど、そんな無意識に行動してしまっている部分でさえも『私』として認めてくれて、全てをそのまま肯定してくれていることが嬉しかった。 私は、自分で制御出来ない『その部分』が、ずっと嫌いだった。そのことで昔から母や圭ちゃんに沢山迷惑を掛けてきたからだ。でも今回のことで、それらの行動が全て自分の中のわだかまりなどが積もりに積もったことで無意識下で起こしたことだと知った。 ずっと、心の中にあって。 それでも、自分で見ぬふりをし続けていた想い。 そんな私に、桐生さんは目を逸らさず全てを受け止めろと言った。素直に認めることが大事なんだと。あれから少しずつ、自分の気持ちに向き直るように意識するようになった。
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