エピローグという名の日常

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「そうだぞ、お転婆眠り姫。何事も油断大敵って言うだろ?少しの気の緩みでも足元をすくわれかねないのが現実だからな」 突然の声に圭と紅葉は二人して顔を見合わせ、同時に声のする方へと振り返る。すると、そこには「オッス」と片手を上げる桐生と、その横から「おはよー」と爽やかに手を振る立花がいた。 「おはようございますっ」 「おう」 桐生たちは傍まで歩みに寄って来ると、紅葉と圭の二人を挟むように両隣についた。自然な動作で紅葉の横に並んで歩く桐生を見上げて紅葉は首を傾げた。 「さっき言ってたのって何ですか?おてんば…何とか?」 「ああ、『お転婆眠り姫』な。お前のあだ名だな」 「あだ名っ?私のですかっ??」 そんなもの、いつの間に出来たのだろうか。 (まぁ『掃除屋』よりかはマシだけど…) 頭の端でそんなことを考えていると。 「実は昨日、ウチの組の若い奴らが言ってたんだよ。『今日は眠り姫さん、いませんねー』って。何のことなんだか聞き返したら、お前のことを『眠り姫』って皆で呼んでるんだとか言っててよ」 「ええぇ?」 (『姫』っていうのが、ちょっと恐れ多いんだけどーっ) 「ま、言ってる意味は解らなくもねぇんだが、実際そんな大人しいモンじゃねぇだろって話になって」 「あー」 (…ですよねー) 「んで出来たのが『お転婆眠り姫』ってワケだ。ピッタリだろ?手に負えなそうな辺りが」 「ははは…。耳が痛いです…」 肩を落として苦笑を浮かべる紅葉に、横で二人のやり取りを見ていた圭と立花も桐生と一緒になって笑い声を上げた。
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