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「何か、無性に眠くなるんだよね。最近…」
「…無性に?」
「うん。授業中は流石に居眠りしないように頑張ってはいるけど…。自分でも気付かないうちに疲れが溜まってたりするのかなって」
言いながら首を回してみると、小さくコキコキ…と骨が鳴った。
「高校に入って環境が変わったことで精神的な疲れがあったりとか?」
「うーん。自分ではそんなに感じないけどね。あ、それとも…」
「…それとも?」
何故だか、さっきから圭ちゃんが妙に心配気な顔でこちらを見つめてくるのに気付いていた。
さり気なさを装ってはいるけど、何かを気にしているのは見え見えだった。
それなりに長い付き合いは、伊達じゃないのだ。
(でも、圭ちゃんのことだから…。また、要らぬ心配をしていそうだなぁ)
それこそが彼の優しさなのだと知っているけれど。
紅葉は、安心させるように冗談めかして笑った。
「春だから、かもね?」
自分の眠気を季節のせいにするのも何だとは思うけれど。
(実際、春って眠くなるものだし)
すると、圭もつられて破顔した。
「何だか野性的でいいね。紅葉らしいよ」
「ちょっと圭ちゃん!それって、どーいう意味っ?」
二人して笑い合う。
その後は、自然と別の話題に変わってしまったのだけれど。
この時、何故圭が突然そんなことを言い出したのか。何を気に掛けていたのか。
紅葉は、後々知ることになるのだった。
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