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「雪平さんって冬生まれじゃないんですか?」
南の言いたいことがわかったらしい。雪平は振り返るが、ぶすっとしている。
「冬生まれだからって寒いのに強いわけじゃねぇんだよ」
この話から話題を逸らしたほうが良さそうだ。
「冬って、誕生日はいつなんですか?」
「ああー、あの日」
「あの日?」
「お前と会った日」
「え」
泣いていた。子どもみたいに泣き喚いていた、あの日の雪平。
「あれが誕生日だったんですか?」
南は絶句する。一か月前の出会った日の雪平を思い出して。
「おい。哀れな目で見んじゃねえ! そういうお前はいつ誕生日なんだよ?」
「え、あ、うんと、ちょうど雪平さんと会った日の一週間前です」
「マジか」
「はい。近いですね」
「よかった」
「よかったですか?」
「少しでも年取っててくれて」
「それ重要ですか?」
「少しでも罪を軽くするためだ!」
南には、雪平がどうしてそこまで気にするのかわからない。南が同意していたのなら問題はないと思うのだ。雪平はあの時のことは口にするな、間違いだった、忘れろというが、南はそうは思っていないので、少し寂しい。
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