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 ドアを開けた瞬間、井上南は溜息を吐きたくなった。この前訪れたのはつい三日前のこと。それからこの短時間で、よくもここまで散らかすことができると感心してしまう。広い玄関には大中小のダンボールが散乱している。まだ開いていないものもある。開こうとして断念したのだろう、中途半端にガムテープが剥がされているものもある。この部屋の主はとにかく面倒くさがりだから。 「雪平さん、南です。上がりますよ」  聞こえたところで返事をすることすら面倒くさがる人だ。了承の声は聞こえないのを前提に、一応声をかけて部屋に上がる。ダンボールはとりあえず蹴らないようにだけ気をつける。  あとで片付けよう。明日は資源ごみの日だから、潰して縛っておかないと。あの人は自分ではやりっこないからどんどん溜まってしまう。  リビングのテーブルには空になったカップ麺の容器、ビールの空き缶、酒のつまみが出しっぱなしになっている。  ……生ハムとチーズはいつから出てるんだろう。大丈夫かな。これもあとで片付けよう。  南はコートを脱ぎ、制服のブレザーも脱いで椅子の背もたれに掛ける。カーディガンの袖をまくった。強い暖房が効いた部屋は南には暑すぎる。空気もこもっているように感じた。リビングの窓を全開にして、ノックをしてから寝室のドアを開く。
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