最終章

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「なんですか、これ」 「楽譜。フルートの。今からその曲志岐とやるから、お前も入れ」 「は? 何を言ってるんですか!? 初見で入れって!?」 「難しくはないはずだ。南なら初見で行けると思う」 「待ってください! 無理です! だいたい、志岐さんとやるって何ですか!? 志岐さんの曲を作ったってことですか!?」  南は頑なに、足を進めようとしない。店内のざわめきが聞こえてくる。 「作ったよ。志岐天音の曲を。俺がすべてを失うきっかけになった男の曲を」 「どうして……だってまた……!」 「また失ったら、また得られるまで努力するだけだ」  南と志岐をおいて、店内の舞台に上がった。ざわめきが鎮まっていく。黙ってピアノの椅子を引く。深呼吸を一つして、奏で始める。
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