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「雪平さん」
ベッドの上の毛布の塊に声をかける。うつ伏せに丸くなってパソコンか何かをいじっていたのだろう。頭から毛布をかぶったまま起き上がり、もぞもぞとゆっくり、顔だけ出してこちらを向く。
………小さい頃にああやってシーツとか毛布をかぶって〝おばけごっこ〟とかしたな。
「てめぇ、窓開けやがったな! 寒! ドア閉めろ! 死ぬ!」
「寝室も空気を入れ替えた方がいいですよ」
「うっせぇ! この部屋には俺しかいねぇんだから、何の菌もウイルスもいねぇ綺麗な空気なんだよ!」
溜息を隠すことなく大きく吐いて、南は部屋に入ってドアを閉める。
「なんですか、あのダンボールは。カップ麺もそのまま。燃えるゴミはここ、ダンボールはここ、新聞紙はここって、この前言って帰ったじゃないですか」
「今日お前が片付けんだからいいんだよ」
「俺部活も習い事もしてるから、課題とかによっては来られないかもしれないって言ったじゃないですか」
「でも来たじゃん」
毛布おばけが二ッと笑う。晴れやかな笑顔。こういう顔をすれば南が許すと思って狙ってやるからタチが悪い。
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