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「俺が、もし来なくなったら」
「え、何、みーちゃん忙しいの? 俺飢え死しちゃう」
「……自分で食料を調達するって選択肢はないんですね」
「通販で乗り切るか……」
真剣に悩んでいる雪平に、胸の苦しさはなくなる。他に誰かいるのなら隠す人ではないし、今頼られているのが自分だけというのは勘違いではないのだと思えるから。
「大丈夫です。明日も来ますよ」
「え、なんだよ、心配して損した。あー腹減った。南、なんか作ってー!」
「はいはい」
翌日は土曜日で、顧問の都合で部活もなかったから朝から雪平の家にやってきた。さすがに、一日では部屋も散らかりはしていない。寒波がきているとかで昨日よりもずいぶんと寒く、雪平をベッドから出すのには苦労したが。
「へへ、卵スープ」
ソファで膝を抱えながら、雪平は満足そうにマグカップで手を温めている。身体が温まるようにと作った生姜入りの卵スープを餌に、やっとベッドから引きずり出せた。
「雪平さん、昼はどこかに食べに行きましょう」
「は? お前正気か? 俺は今日玄関に近づくことすらできねぇよ! あっちまで暖房効かねぇから」
「コート着てカイロ貼って行けば大丈夫ですよ。靴に入れられるカイロもありますから」
「無理! 玄関までの床が冷めてぇもん!」
強敵である。南を言い負かして得意げになった雪平は、雑誌を出してきてペラペラめくっている。
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