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「雪平さん、あっちの部屋貸りますね」 「おー」  一通りの家事をこなせば、南は南で、習い事で出された課題に取り組む。取り組みながら、なんとか雪平を外に出せないかと考えていた。  昼になってリビングに戻ると、雪平はソファで本に埋もれていた。 「……なんでそう、いろんなもの引っ張り出してきて戻さないんですか」  うつ伏せで頬杖をついて本を読んでいた雪平は、南の声で振り返るとともに本をバサバサと落とす。 「まだ使うから置いてるのー」 「はいはい」  雪平のセーターとジーンズ、コートと帽子を取ってくる。雪平は不穏な気配を感じたのか、口をへの字に曲げる。 「外には行かないからな」  無視して着替えさせる。口では文句を言うが、着替えに抵抗はしない。 「……スウェットは自分で着替えてください」 「やだ。だって俺は着替えたくねぇもん」  まるで小さな子どものようだ。いや、これは自分をからかっているんだなとわかる。あの日のことは話すなと言いながら、こうやってからかってくるのはどういうことか。  一矢報いたくて、座っていた雪平をソファに押し倒す。雪平は目を丸くした後、少し焦ったように南から目を逸らす。
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