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「へえ。意外。井上ってクラシック以外も聞くんだ?」  昼休みに雪平が作った佐羽の曲を聞いていたら、いつの間にか前の席に浅海が座っていて、片方のイヤホンを奪われていた。元々ボブで短かった髪が、気温が上がるのに合わせてさらに短くなっていることに気がついた。「似合うね」などと南が気の利いていると思うことを言っても、浅海には気味悪がられるだけだと思ったので言わなかった。 「浅海さん……どうしたの?」 「ちょっと相談があって。コンクールの曲のパート分けのことでさ、芽衣ちゃんが悩んでるみたいだから」  隣のクラスの浅海が、部活のことで南のクラスを訪ねてくるのは珍しいことではなく、周囲も気にしないから馴染んでいる。 「浅海さん、コンクール出るの? 出れるか微妙って言ってなかったっけ?」 「出る出る。指定校推薦で決まりそうだから」 「いいなぁ」 「あんたは精々頑張って」 「はい」  音楽を止めてイヤホンを外そうとしたら、浅海が首を傾げる。 「今の曲さ、佐羽の曲でしょ? 雪平芳野が作った」 「え、知ってるの?」 「いや、最近の曲じゃないけど知ってる子は知ってるでしょ。ほら、雪平芳野ってsmileyの新曲作ってるし、佐羽も今年十周年とかで最近よくテレビ出てるじゃん」 「あんまりテレビ見ないから」  浅海は、ははーんと妙に納得したような声を出す。
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