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第二章
スチュアートが馬にひらりと跨った、その姿を見て不覚にも綺麗だと思った。花も咲いていない薄黄緑色の風景の中に、百合の花びらが一枚はらりと舞い落ちたようだった。その風景に息を飲んだ。知っている、この風景を。
あれは二月に訪れたウィーンでのオーパンバル、その会場で見かけたあの美しい燕尾服の男性。十七歳になればお前も社交界デビューだからよい機会だ、会場の雰囲気だけでもと連れて行かれた。冬のウィーンの国立歌劇場。吐く息が白く見える彼の地で、その会場はヨーロッパ中から集められた何万本もの花で飾られ、王侯貴族が栄華を誇っていた当時そのもののような夢絵巻だった。
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