第二話 セラフィの栄光

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それは一通の招待状から始まった。 ある日、古くから続く由緒ある名家の西園寺家に一枚の郵便物が届いた。 郵便物は差出人不明の状態で投函されていた。 最初にその不審な黒い封筒に気が付いたのは、西園寺家の執事である榎本だった。 封筒の厚みから爆弾等の危険物が入っている可能性は限りなく低いと判断した榎本は、速やかに西園寺家の現当主である西園寺レオンのいる食堂へと足を向けた。 優雅に朝食を食べていたレオンは、少々慌てた様子で入ってきた榎本を見てカトラリーを置いた。 テーブルナプキンで口を軽く拭いたあと、彼は榎本に向かって口を開いた。 「何かあったのかい?」 レオンの問いかけに榎本は素早くけれども粗相のないように、彼の側に近付いた。 それから、先ほどの郵便物を懐から取り出し、レオンに耳打ちをする。 「差出人不明の郵便物が届いていました。いかがいたしましょうか」 レオンは榎本から件の郵便物を受け取り、封筒から中身を取り出した。 この時既に榎本はレオンから離れ、壁際に控えていた。 封筒に入っていたのはオークションへの招待状であった。 名家である西園寺家には時折オークションの招待状が届く。 とは言え、それは知り合いの美術商などから直接送られてくるものであり、今回のように差出人不明になっていることなどあり得ない。
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