第二話 セラフィの栄光

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この屋敷で粗雑な動きをする者はひとりしか思い付かない。 しかし、彼女はいつもなら昼下がりまで眠っているはずなのだが。 屋敷の空気がいつもと違うことを直感的に感じ取ったのなら、流石と言えるだろう。 何せ、彼女は世間を騒がせている現役の怪盗なのだから。 レオンはさっと封筒に招待状を仕舞うと、爽やかな笑顔を向けた。 彼女に知られれば厄介な事になると彼の本能が告げていたのだ。 「あゆみ、今日は早起きなんだね。何か用事でもあるのかい?」 扉を開けた彼女もとい、あゆみはまるで猫のように気まぐれな女性だった。 寝起きのまま食堂に来たのだろう、その豊かなロングの黒髪は少しばかり乱れていた。 ネグリジェ姿のあゆみは、煙草に火をつけながらレオンの側までやって来て、まるで何でもないことのように答えた。 「そうね、ストーカーさんが起こしてきたのよ」 「ストーカーだって?!」 驚くレオンを尻目に彼女は続けた。 「そんなことより、寧ろ用事があるのは貴方の方じゃないの?」 あゆみは俊敏な動きでレオンの持っていた招待状を取り上げる。 それから、中身にざっと目を通したあゆみはレオンに尋ねた。 「行くの?」 「行かないよ」 「いや、行くんだ」 「ご、ご無沙汰しております」 2人の会話に突然乱入してきたのは、よれたスーツを着た小田泰造だった。 そして彼の後ろに控えながらも、しっかりと挨拶をした唯一の常識人は彼の後輩である真鍋幸子であった。 二人は怪盗キティ専門の刑事であり、つまりはあゆみの天敵でもあった。
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