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「本当はきちんと掃除をしたかったのだけれども。何分、この家は広いというのに、住んでいるのは僕と榎本くらいだろう? そして、泰造は僕の幼なじみだ。少しくらい掃除を怠っても許してくれるのでは、と思ってね」
飄々としたレオンの態度に、小田が舌打ちをする。
「そうそう、猫を拾ったのも昨夜遅くなんだ」
「ふん、まぁそういうことにでもしておいてやるさ」
「助かるよ」
何かを隠しているらしいレオンの様子に、小田は折れたのだ。
「えっと、それじゃあ、私たちはどうすれば良いですかね?」
「どうもこうもねぇよ、仕事は終わりだ。帰るぞ、幸子」
小田が立ち上がる。
慌てて真鍋も立ち上がる。
その時、洋館の2階からどん! とものすごく大きな音が響き渡った。
応接室にいる全員が動きを止める。
「おい、今のは」
「おやおや、昨日の猫が悪戯をしているようだ。ちょっと見てくるよ。榎本、2人の見送りをお願いできるかい?」
「もちろんでございます」
小田の静止を聞き流し、レオンは2階へと向かう。
そして迷わず2階の一番奥の部屋へ。
レオンがその客間の扉をノックするも、返事はない。
少し躊躇った後、彼は扉を開けた。
「ものすごい音がしたんだけど、大丈夫かい?」
「……うぅ、痛」
そう言ってベッドの影から起き上がってきたのは、黒髪の美女だった。
彼女は、顔をしかめながら頭をさすっていた。
「おいおい、勘弁してくれよ。まったく、とんだ子猫(キティ)だね、君は。大方、ベッドからでも落ちたんだろう? 下の階まで響いてきたよ」
レオンの物言いに“キティ”と呼ばれた女性はむっとする。
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