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そんなカオス極まるこの部屋に、真鍋の声が落とされる。
「あの、すみません。猫がいないって聞こえてきたんですけど……」
「あぁ、ごめんね。本当は猫を拾ったわけじゃないんだ」
「おい、どういうことだ?」
「さっきから猫猫って何の話よ?」
レオンがあゆみを見て、続ける。
「本当に拾ったのは、彼女のことなんだ。名前はあゆみ。だけど、それ以外の事は何も覚えていないんだって」
彼の説明に小田と真鍋が息を呑む。
あゆみはレオンに視線を投げかけるも、口は開かない。
小田と真鍋の顔が次第に赤く染まってゆく。
“拾う”という単語に一体何を想像したのやら。
レオンはどぎまぎしている2人を生暖かい目で見守り、あゆみは新しい煙草を取り出して、いつの間にか煙草を吸っていた。
「とにかく、そういうことだからさ。今日は帰ってもらってもいいかな?」
レオンの言葉にあゆみも便乗する。
「そうそう、早く帰りなよ」
執事の榎本は扉の横で控えている。
「あ、あぁ。末永くお幸せにな」
「こ、今夜も警戒だけは怠らないようにしてください! お、お、お幸せに」
榎本と小田、真鍋が客間から出てゆく。
洋館自体からも出て行った刑事2人が帰ってゆく。
帰り際、小田が先ほどの部屋を見上げ、独り言ちた。
「まさか、な……」
「何か言いましたか?」
「いや、なんでもねーよ」
去っていく2人の後ろ姿をバルコニーからレオンもまた見ていた。
彼バルコニーから客間へ戻ると、あゆみがベッドに寝そべり、煙草をふかしている。
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