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死にたい――。
私はその時、ただそう思っていた。
早くに親を亡くし、唯一の家族だった祖母も最近他界した。
人生これからという年齢も、ひとりぼっちとなった私にはあまりにも長い時間である。生きる気力なんてなく、もう終わりにしたかった。
「ぁ…っ」
雪に足を取られ、そのままボフッと前に倒れこんだ。雪原の森の中をいったいどれだけ進んだだろうか…。わからない。
はらはらと降っていた雪も、いつの間にか吹雪のように激しくなっていた。
もう、いいや――…。
私は滲んだ視界で前を見るも、いよいよ体力も限界のようでほとんど見えなかった。
死に場所を求めてなんとなくこの森にやって来た。
静かで、空気が澄んでいて、新雪のように誰にも荒らされていないかのような雪原の森。辺りには雪をかぶった木々が広がっていて、それらが夜の闇と相まってとても幻想的だった。
もういいや、もう疲れた…。
思い残すことなんて、ない。
でも欲をいえば、せめてきれいな景色を見てから死にたかったな。
この村は昔からオーロラで有名な場所だっけ。この森の奥にもそれらが見られる場所があるらしい。せめて、そこまでたどり着きたかったな。
「う…っ」
そんな思いも薄れていき、吹きつける風と凍てつく寒さの中、とうとう私は目を閉じ意識を手放した。
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