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暖かい空気に包まれているような感覚に気づき目が覚めた。
「……なに」
目に入ったのは見慣れない天井。そしてやわらかいベッドの感触。ぼんやりと重たい頭で辺りを確認すると、そこは見たことのない部屋だった。部屋の片隅では立派な暖炉がぱちぱちと火を放っている。
ここは一体…?たしか、あの時――。
すると突然、部屋の扉がガチャリと開いた。
「…起きたか」
扉の向こうから現れたのは、背の高い男性だった。私の姿を見るとのそりと部屋に入ってきて、ベッドの側へ近づいて来る。
「えっと…」
男性の姿は異様だった。
動物の毛皮のコートを身に纏い、頭からは笠をすっぽりと被っていて顔が見えない。
そんなおかしな恰好をしていて、間近で見るとかなり大柄な人だった。
もしかして、この人が助けてくれたのかな…?
「あの…」
「よかったな。あと一時間経っても目を覚まさなければ、さばいて喰うつもりだった」
「え」
降ってきた言葉に、私は伏せていた目を上げる。すると男はこちらを見下ろしていて、顔を隠す笠のわずかな裂け目から光る目を覗かせていた。
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