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何…。さばいて喰う?
今、そう言ったの?それって、私のこと?
この人、一体何者――。
「…この村の人間はオレを雪男と呼ぶ」
困惑していた私に目の前の男がふいにそう言った。
「え、雪男…?」
私がそう聞けば、その人はうなずく。
「ここはオレの家。そしてこの森はオレの庭のようなものだ。お前はそこで倒れていた」
「そう、ですか…」
そう言うと、雪男と呼ばれる人がずいっと顔を近づけた。そして探るように私に聞く。
「お前は旅人か?」
「…いいえ」
「なら自殺志願者か…」
「え…っ!」
ぎくりとした。まさに図星だったからだ。でも、なんでそう思ったんだろう?
男の人は、きれいな緑色の目を細めると言った。
「この森に足を踏み入れるのは二種類の人間しかいない。一つは観光目的の旅人。もう一つは、命を捨てに来る奴…。オレはそれ以外の人間を見たことがない」
あぁ、なるほど。そういうことか…。
「お前は、後者だな」
「……」
そう聞かれ、私は何も言わずに口をつぐんだ。
「…どうして、私なんかを助けたんですか?」
あのまま森の中で倒れていれば、そのまま眠るように死ねたんだろうな。そう思った。
きっと今の私は目が死んでいるんだろう。卑屈な私の言葉に、男の人がため息をついた気がする。
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