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試験の代わりにレポート提出で必要な単位がもらえるのは助かる。なのに何故か夏休みの集中講義の課題をギリギリまで先延ばししてしまった。これを落とせば早くも教員免許の取得が厳しくなる。
しかもバイト疲れなのか残暑疲れなのか、眠気に勝てずなかなか集中できない。再び立ち上がって窓を開け、ひんやりした夜気を胸一杯に吸い込む。
冷蔵庫から紙パック入りのアイスコーヒーを取り出して愛用のカップに注ぎ、ラジオから流れ始めた曲に耳を傾けるーーマドンナの新曲のようだ。
ダンサンブルな洋楽は日本でも大ブームとなり、世界を席巻するアーティストが次々と紹介されていた。が、衝撃度でマイケルジャクソンと並んでいたのがマドンナだったろう。
日本が男女とも未婚率五パーセント以下のほぼ「皆婚社会」だった頃であり、かつ婚前交渉が事実上タブー視されていた頃でもあった。
ゴンドラの上で露出の多い衣装で踊り、胸元の開いたウェディングドレス姿で「ライク・ア・ヴァージン」と歌い処女ではないことを公言するーーそんなマドンナのミュージック・ビデオは物議を醸した。世の常で若い世代には「カッコいい」と受け入れられたのだが。
入試対策の付け焼き刃と教養コースでかじっただけのリスニング力では覚束ないのだが、今流れている曲は「人生はパーティ、誰もがスターになれる」……そういった事を歌っているようだ。
「トレンディドラマに出てくる女子大生になりたい」
いつだか優美が熱っぽく語っていたのをふと思い出した。
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