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「私は暦通りでよかったよ。夏じゃあイマイチ気分出ないし、振袖じゃ暑いじゃない」
優美も真顔で答えていたが、
「あっ、でも成人式に二回出られちゃったりして」
と冗談混じりに笑った。貴子が呆れて
「二回も成人式してどうするのよ」
と聞き返した。
「だってうち、おばあちゃんが張り切って振袖買っちゃったんだよ」
「凄いじゃない。私なんてレンタルよ」
「凄くない。おばあちゃん、年金少なくて葬式代も出せないっていつもボヤいてるのに、いつの間にへそくりしてたんだろ」
優美はあっけらかんと嘆いた。
「それに私、クリスマスケーキの二十五歳までには結婚したいの。そしたらもう着られないじゃないの。もったいない」
「だからって二回成人式したら二十歳に二十歳……四十歳になっちゃうよ?」
亜子が優美をからかう。
「ならなーい!『二十歳過ぎたらもうオバン』なのに倍なんて悲惨!人生終わる!」
「二十歳過ぎたら?じゃあ私たちオバンなの?」「オバンです。イェーイ」「えーっやだウソ、カワイイッ」「あははは」
どこかで自分達は一生、三十代以上にはならないと信じている怖いもの知らずの三人だ。
「ご安心なさいな。私が三高のハンサム医師と結婚して式に呼んであげるから。振袖でも打掛でも好きなの着てくるといいわ」
突然貴子が芝居がかった口調で請け負ったので驚いた。
「ええっ?」「貴子、相手いるの?」
間に受けて色めき立つ亜子と優美に、貴子は盛大に吹き出した。
「いるわけないじゃなーい」
「なんだ、びっくりさせないでよ」
「普段は女の園だもの。これから探すのよ」
「お相手はどんなタイプがいいですか?」
優美がワイドショーのレポーターを真似て、マイクに見立てた割り箸を突き出した。
「そうそう。彼と一緒に金屏風立てて記者会見してよね」
「スモーク焚いて、ゴンドラに乗って登場してね」
「ド派手婚だね」
「お色直しは最低三回で、打掛と十二単とドレス。ウエディングベールは十メートルくらい引き摺るやつね」
「ひえっ、ブーケトスが届かない」
「あははははは」
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