鍵は後で弁償してもらうから。

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「で、あんた。なんでうちなんかに。」 元村と名乗った空き巣に尋ねる。 なぜだかしんしんと積もった雪のように、心は静まり返っていた。 「え、えっと、生活が、苦しくてですね…」 「違う違う。あんたの事情のほうじゃなくてさ。なんで道挟んで隣の一軒家じゃなくってこんな見るからにクソ貧乏なアパートにわざわざ来たかってこと。」 隣の家は見るからに豪邸、大してこっちは[壁に画鋲を刺すと、2つ隣の住民の頭に刺さる。]と噂の貧乏どころか三次元に存在しているのかすら怪しいワンルームだ。 「あそこ、犬いるので…。」 「はあ?」 確かに隣の家に犬はいる。チワワを、何故か庭に繋いでいる。 誰かが近くを通るたびに吠えているので、吠え声が完全にイカれたチワワ。 チワワにも勝てない空き巣。 当たり前だがチワワより怖くない。
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