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鍵は後で弁償してもらうから。
私、常田 継華は間が悪い。子供の頃からよくそう思っていた。
二秒遅刻したり、カップラーメンに湯を入れて三分ちょうどのところで宅急便が来たり。
些細なことではあるが、少し引っかかること。
その間の悪さが、今日ついに爆発した。
「あ、あの、えー…」
一人暮らしを初めて二年とちょっと。
友人すらも上げたことのない自分だけの六畳間。
戸締まりはしたはずなのに鍵が閉まっていなかった扉を首をひねりながら開けると、ちょうど見知らぬ男が、部屋のタンスを閉めていた。
しかも勝負下着を仕舞っている三段目。確実に赤の下着上下は見られた。
時刻は22時22分。ゾロ目で縁起がいい。
いや縁起もクソもあるか。
空き巣か、これ。
「…」
沈黙。本当に間が悪い。
焦るタイミングも、怒るタイミングも逃した気がする。
「…あんた、名前は?」
何故か名前を聞く自分。
「元村です…」
そして何故か答える空き巣。
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