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朝日を遮るように、雲ひとつない空へと手をかざす。
そんな何気ない仕草も絵になる俺の名前は、須玖璃 透(すぐり とおる)。
無造作にセットされた栗色の髪が風になびくと右耳のピアスが顔を出し、182cmあるすらりと伸びた長身には適度に着崩された制服をまとう。
まだ少し肌寒さが残る気候もなんのその、俺は今日もイケメンだ。
「…ぶへっくしょいっ!」
…すみません。嘘つきました。
どれだけイケメンでも寒いもんは寒いです。
では、気を取り直して…。
俺は家から徒歩5分の好立地にある有栖川(ありすがわ)高校に通う学生だ。
通学路には、下ろしたての制服を身にまとい、新生活への期待を胸に、きゃっきゃと登校する学生がちらほら。
今日で2年になる俺も、後輩がいる新しい環境に胸が踊らなくもない。
かっこよくて頼りになる憧れの先輩として、まずは今日1日を完璧に過ごすとしよう。
「あ、透!お前また実力テスト1位だぜ。ほんと凄いよ。」
校舎に着いてすぐ、クラスメイトの橘に呼び止められる。
校舎の入り口にある掲示板には、実力テストの結果が貼り出されていた。
もちろん、1位には俺の名前。
「ほんと?どうなるかと思ったけど、良かったー。」
ここは、嫌味がないように、無邪気フェイスで対応しよう。
「この間はありがとな!地区予選突破出来たの、透のお陰だよ!」
後ろから話しかけてきたのは、同じくクラスメイトでバスケ部の高柳。
先日助っ人としてバスケの試合に出た俺は、部員顔負けの功績を残していた。
「みんなのアシストのおかげだって。ありがと、楽しかったよ!」
ここは相手を立てて好感度アップだ。
「それ、私達も応援に行ったんだよ!すぐるん、バスケ部じゃないのに凄かったよね!」
「ほんと、すぐるん超かっこよかったよー!」
変なあだ名で呼ぶ彼女たちは、クラスメイトの白石と岩崎。
「来てくれたんだ。応援ありがとね。」
もちろんばっちり確認していたが、ここは気付いてないふり。
ついでに爽やかスマイルもおつけしよう。
頭脳明晰、運動神経抜群、おまけに容姿端麗。
そんな俺は男女問わずの人気者だ。
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