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「はっ、なーにが"来てくれてたんだ"よ。きっちり見つけてニヤニヤしてたくせに。」
「ん?何か言った??」
聞き慣れない声に周囲を見渡す白石。
「あ!俺ちょっと用事思い出したから先に行くよ。」
もう一度爽やかスマイルをお見舞いして、俺はそそくさとその場を離れた。
人目がないことを確認し、自分のカバンを覗く。
「おい、あんな所で喋るなよ!」
「あら、そんな口聞いていいの?誰のお陰で今の生活を得られたと思ってんのよ。」
そう言いながらカバンから顔を出すのは、3頭身の天使のような悪魔。
唯一の、俺の悩みの種。
たった15cmの小さな身体に、柔らかい曲線を描いてふわりと膝まで伸びる金色の髪。
顔の半分程ありそうな丸く大きな瞳は金色に輝き、俺が子供版リ◯ちゃん人形から拝借して補正した服をまとう。
「…そ、それとこれとは別だろ!」
「あんな三文芝居見てらんないのよ、こっちは。」
そう言って、その愛くるしい見た目に似つかわしくないゲス顔を見せる。
しつこい様だが、もう一度言おう。
俺は頭脳明晰、運動神経抜群、おまけに容姿端麗。
交友関係は広く、毎日の様に下駄箱にはラブレターが届き、仲の良い両親と少しブラコン気味な可愛い妹に囲まれて順風満帆な人生。
そう…この可愛い悪魔さえいなければ。
この不思議な生物のことを説明するためには、時間を遡らなければならない。
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